石油技術協会 会長 髙橋 利宏
【2024年6月】
このたび石油技術協会の会長を務めさせていただくことになりました石油資源開発株式会社の髙橋利宏でございます。はじめに,この場をお借りして,協会員ならびに関係者のみなさまには,日頃より協会活動にご理解とご支援を賜り,感謝を申し上げたいと思います。今年で91 年目を迎える当協会の会長の職に就くにあたり,これまでに多くの諸先輩方が築き上げてきた伝統ある石油技術協会とその会長の責務の重さに身の引き締まる思いです。あらためて,その大役を見事に果たされた小寺前会長に敬意を表するとともに,今後は私自身が会長としての職務を全うするべく,副会長はじめとする理事・評議員・幹事・各委員会,事務局と力を合わせ,会員のみなさまにとって少しでもお役に立てるような企画・行事を提供して参りたいと思います。
さて,最近の社会情勢を振り返りますと,ロシア・ウクライナ戦争,イスラエル・パレスチナ戦争などの国際紛争の勃発とその長期化,これにともなう世界的なエネルギー安定供給への懸念と急速に進んだ円安の影響を受けて,世界各国におけるエネルギー安全保障の重要性が改めて社会的に認知されたと思います。今後,中・長期的な観点からは様々な新たな資源エネルギーの利活用が想定されますが,石油・天然ガスが世界の一次エネルギーのなかで一定程度主要な役割を担い続けるものと考えます。
一方で,化石燃料を扱う石油開発業界にとって,今は大きな転機と変革の時期でもあります。気候変動への取り組みや低炭素社会の実現に向け,世界的な動きが加速している中,当協会でも外部環境の変化に応じて柔軟に対応することが大切です。具体的な取り組みとして,昨年度は小寺前会長の主導のもと将来像検討会を立ち上げ,その中で当協会のミッションとビジョンを策定し,協会員のみなさまと共有することができました。
さらに,当協会として,カーボンニュートラルへ向けた様々な取り組みの中で,特に私たちが保有する技術に親和性が高く,かつ国内外で具体的な事業化の取り組みが進んでいる二酸化炭素の地中貯留分野に着目し,CCS 委員会を新設しました。今後,石油開発で培った技術,それに知識と経験を同分野に還元・活用しながら,さらなる技術の研鑽と発展を目指すとともに,二酸化炭素の貯留だけでなく,分離・回収・輸送を含めた他分野・他業種の方々との人材交流と情報共有を通じて,低炭素社会に向けた取り組みに貢献していきたいと思います。
直近の当協会の課題もあります。現在進行中の90 周年記念事業を確実に遂行するとともに,事務局体制の強化と協会財政の健全化に取り組みたいと思います。こうした取り組みにより,当協会のさらなる価値向上を目指していく所存です。また,協会員の交流を通じて長い歴史の中で石油鉱業が培った技術を継承し,さらに発展させるとともに,大きな時代背景の変化の中にあっては,他分野・他学協会との協働を通じて,異業種の方々とも交流・議論できる場を積極的に提供して参ります。
最後に,協会員ならびに関係者のみなさまに,今後とも変わらぬご指導・ご鞭撻をお願いして,会長就任の挨拶とさせていただきます。何卒宜しくお願い申し上げます。
石油技術協会 会長
髙橋 利宏